プライム上場企業のCO2排出量開示、2027年3月期から段階的に義務化。

更新日 : 2026年07月23日
DX・業務改革
プライム上場企業のCO2排出量開示、2027年3月期から段階的に義務化。

プライム市場上場企業には、温室効果ガス排出量の開示が有価証券報告書で段階的に義務づけられます。対象には、取引先を含めたサプライチェーン全体の排出量も入ります。しかし、排出量の把握を担う取引先の中小企業は、その多くがまだ着手前です。精度の高い開示は、供給網全体の対応にかかっています。

プライム上場企業は2027年3月期から段階的に義務化

金融庁の金融審議会ワーキング・グループ報告によると、プライム市場上場企業に対し、有価証券報告書でSSBJ基準に基づくサステナビリティ情報の開示が義務づけられます。対象には温室効果ガス排出量が含まれます。※1

適用は時価総額の大きい企業から段階的で、時価総額3兆円以上は2027年3月期、3兆円未満1兆円以上は2028年3月期、1兆円未満5千億円以上は2029年3月期に始まります。※1

また、第三者による保証についても、開示開始の翌年度から段階的に義務づけられます(当初2年間は保証範囲を限定)。※1

自社の開示のためには、取引先の排出量データも必要

開示が求められる排出量には、自社の排出だけでなく、原材料の調達から製品の使用まで含むサプライチェーン全体の排出量(Scope3)も入ります。※1

つまり、自社の開示を成り立たせるには、取引先の排出量まで把握する必要があります。実際、中小企業庁の調査でも、脱炭素に関する取引先からの協力要請は増加しており、特に製造業・小売業・建設業・運輸業で要請が増えています。※2

大企業の開示義務が、取引先への要請という形で供給網に広がっています。

中小企業の多くはまだ「着手前」

Scope3は業界平均値や排出係数を用いても算定できるため、開示自体は可能です。ただし、開示の精度を高め、実際の排出削減につなげるには、取引先が実測した一次データが欠かせません

ところが、その取引先の多くはまだ着手前です。中小企業のうち、事業所全体のCO2排出量を把握する段階まで進んでいるのは2023年時点で2割程度、脱炭素の担当部署・担当者を置いているのは11.2%にとどまります。※2 要請するだけでは、一次データは集まりません。

大企業がとるべき3つの打ち手

そこで大企業に求められるのが、取引先への具体的な支援です。取引先が求める協力内容には、排出量の算定や削減目標の策定が挙げられます。

一方で、協力要請と併せて技術的・金銭的な支援まで行っている発注側は25.0%にとどまり、踏み込む余地は大きいのが実態です。※2

大企業がとるべき具体的な打ち手は、次の3つです。

第一に、排出量の算定手法やツールを取引先へ提供すること。

第二に、排出量の大きい主要取引先から優先的に、データ提供の依頼と算定支援をセットで進めること。

第三に、補助金や研修など、資金・人材面の支援に踏み込むことです。

要請から支援へ一歩踏み込めるかどうかが、自社の開示の質と、供給網全体の排出削減を左右します。

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※1 金融庁 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ報告」― プライム上場企業に有価証券報告書でSSBJ基準に基づくサステナビリティ情報(温室効果ガス排出量 Scope1・2・3を含む)の開示を義務化。時価総額3兆円以上=2027年3月期、3兆円未満1兆円以上=2028年3月期、1兆円未満5千億円以上=2029年3月期。第三者保証は開示義務化の翌年度から段階的に義務化(当初2年間は保証範囲を限定)
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20260108/02.pdf

※2 中小企業庁「2024年版中小企業白書」第1部第4章第5節 GX ― 脱炭素化に関する取引先からの協力要請は2020年比で増加(特に製造業・小売業・建設業・運輸業)、要請内容は省エネ・CO2排出量の算定・削減目標の策定等。事業所全体のCO2排出量を把握する段階以上に進んだ中小企業は2023年時点で2割程度、脱炭素化の担当部署・担当者を設置している企業は全体で11.2%。協力要請と併せて技術的・金銭的支援を受けている企業は25.0%
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b1_4_5.html

本コラムの作成・編集者

ターゲットメディア株式会社 ENTERA編集部

BtoBマーケティング支援を手がけるターゲットメディア株式会社の編集チーム。官公庁が公表する統計・白書をもとに、人事・経済・DXなど企業活動に関わるテーマを数字で読み解き、エンタープライズ企業の実務担当者に向けて発信しています。