システム開発の炎上は「特殊な事故」ではない。IPAが示す確率とリスク

更新日 : 2026年07月23日
DX・業務改革
システム開発の炎上は「特殊な事故」ではない。IPAが示す確率とリスク

システム開発の炎上は、一部の特殊なプロジェクトに限った話に見えるかもしれません。しかしIPAが5,546件を分析した定量データでは、管理の行き届いた現場でもコストや品質の超過が1〜2割の確率で起きています。しかも起きたときの超過は、予算が1.5倍、稼働後の不具合が想定の2倍という水準に達します。

炎上は例外ではなく、一定の確率で起きている

IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は、大手ベンダ35社が提供した累計5,546件のプロジェクトデータを分析したものです。※2

実績を自己評価したデータを見ると、コストが計画を超過したプロジェクトは14.1%(およそ7件に1件)、稼働後の不具合が計画値を超えたものは16.8%(およそ6件に1件)、工期が遅延したものは約9%(およそ11件に1件)に上ります。※1

これは特別に難易度の高い開発ばかりを集めた数字ではありません。むしろ定量管理に取り組む大手ベンダの、比較的整った現場での実績です。炎上は一部の例外ではなく、どのプロジェクトでも一定の確率で起こり得るものとして数字に表れています。

起きたときのリスク① 予算は1.5倍に膨らみ、納期は1か月以上ずれる

炎上のリスクは、起こる確率だけでなく、起きたときの深刻さにあります。コストを超過したプロジェクトのうち、計画の5割を超える超過が2.7%を占めます。

当初予算が1.5倍以上に膨らんだ計算です。※1 工期も同様で、遅延したプロジェクトの多くは軽微な遅れではなく、30日以上の遅延が4.9%と、1か月を超えてずれ込んでいます。※1

炎上がいったん起きると、数日の遅れや数%の超過では収まりにくく、事業計画や後続の予定に波及するリスクを抱えます。

起きたときのリスク② 見えにくい炎上は稼働後の品質に残る

炎上はコストや納期だけに現れるわけではありません。品質を超過した16.8%のうち、計画の2倍を超える不具合が2.5%あります。※1

コストや工期を計画内に収めても、リリース後に不具合が想定を上回れば、運用フェーズでの対応コストが発生します。品質の超過はコスト超過より高い割合で起きており、開発が終わった後に顕在化するぶん、事前には見えにくいリスクと言えます。

炎上は「起こるかどうか」ではなく「起きる前提でどう備えるか」

これらの割合は、システム開発の炎上リスクの下限と捉えるのが妥当です。データを提供したのは開発の定量管理に取り組む大手ベンダ35社であり、対象プロジェクトの97.2%がウォーターフォール型の、比較的管理の行き届いた開発です。※2

加えて、超過の判定は第三者ではなくベンダ自身の自己評価に基づきます。※1 それでも1〜2割が計画を超えている以上、実態の炎上はこの数字を上回ると見るのが自然です。

工期の中央値は10.1か月、外部委託の工数比率は中央値で6割強に達し、長期で多重委託になるプロジェクトほど、計画超過の芽は各所に残ります。炎上は「起こるかどうか」ではなく「起きる前提でどう備えるか」で捉える必要があります。※2

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※1 IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」1.3.7 プロジェクトの自己評価(実績の評価:コスト/工期/品質)
https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html

※2 IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」1.1〜1.3 ソフトウェア開発データのプロファイル(累計件数・提供企業・開発ライフサイクル・工期・外部委託)
https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html

本コラムの作成・編集者

ターゲットメディア株式会社 ENTERA編集部

BtoBマーケティング支援を手がけるターゲットメディア株式会社の編集チーム。官公庁が公表する統計・白書をもとに、人事・経済・DXなど企業活動に関わるテーマを数字で読み解き、エンタープライズ企業の実務担当者に向けて発信しています。