製造業の社用車EV化で考えたい充電設備の課題とは?工場の電力管理と導入のポイント

政府は、2030年までに全国のEV充電インフラを30万口整備する目標を掲げています。2025年3月末時点の整備数は約6.8万口で、2025年度には新たに約3.8万口の整備が支援されました。※1※2
EV充電インフラの整備が進むなか、製造業でも営業車や拠点間移動用の車両など、社用車のEV化を検討する企業があります。一方、工場を持つ企業では、生産設備や空調設備などの電力使用状況も踏まえて充電設備を検討する必要があります。
本記事では、EV充電インフラの整備状況を公的データから確認するとともに、製造業が社用車のEV化を進める際に考えたい充電設備の選び方や電力管理のポイントを解説します。
EV充電インフラは2030年に30万口の整備を目指す
経済産業省は2023年10月に「充電インフラ整備促進に向けた指針」を策定し、2030年までの充電インフラ整備目標を従来の15万口から30万口へ引き上げました。このうち、公共用の急速充電器は3万口を目指しています。※1
また、急速充電器の高出力化を進め、充電インフラ全体の総出力を約400万kWまで拡大する方針も示しています。
経済産業省が2026年6月に公表した資料によると、2025年3月末時点で全国に整備されている充電インフラは約6.8万口でした。2025年度には新たに約3.8万口の整備が支援され、2026年3月末時点の整備済み・整備支援分を合わせた数は約10.6万口となっています。※2
ただし、約10.6万口には補助金による整備支援数が含まれており、すべてが設置・稼働済みの充電器を示すものではありません。
全国で充電環境の整備が進む一方、製造業が社用車をEV化する際には、車両の運行形態や事業所の設備環境に合った充電設備を確保することが重要です。
EV充電器導入は、車両の稼働状況に合わせた選定が重要
社用車用のEV充電器を導入する場合、主に普通充電器と急速充電器が選択肢となります。
普通充電器は比較的長い時間をかけて充電する方式で、営業車や社用車が夜間に工場・事業所へ駐車している場合に向いています。一方、急速充電器は短時間で充電できるため、車両の稼働時間が長い場合や短時間で次の運行に備える必要がある場合に検討対象となります。
ただし、急速充電器は一般に設備費用や必要な電力容量が大きくなる傾向があります。例えば、営業車が夕方に帰社して翌朝まで駐車できる場合には、普通充電器でも必要な充電量を確保できる可能性があります。
充電器の種類は充電速度だけでなく、車両の走行距離、帰社時間、翌日の出発時間、事業所の電力設備を踏まえて選定することが重要です。
EV充電器を導入する際の3つの課題
充電器の必要台数をどう決めるか
工場や事業所で複数台の社用車をEV化する場合、必ずしもEVの台数と同じ数の充電器が必要になるとは限りません。車両の走行距離や帰社時間、充電可能な時間帯によっては、複数台のEVで充電器を共用できる場合があります。
一方、営業車や拠点間移動用の車両が同じ時間帯に帰社する場合、充電器が不足すると翌日の業務に影響する可能性があります。そのため、車両数だけでなく、1日に必要な充電量と充電可能時間、車両ごとの運行スケジュールを整理して必要台数を検討することが重要です。
工場全体の電力使用量への影響をどう抑えるか
工場では、生産ラインやコンプレッサー、空調設備など、さまざまな設備が電力を使用しています。
こうした設備の稼働中に複数台のEVを同時に充電すると、工場全体の電力需要が一時的に増加し、最大需要電力の上昇につながる可能性があります。
特に、電力使用量が多い工場や既存の受電設備に余裕が少ない工場では、EV充電による追加の電力需要を考慮する必要があります。そのため、充電器を導入する際には工場全体の電力使用状況を確認し、生産設備の稼働状況と車両の充電可能時間を踏まえて充電時間帯を検討することが重要です。
充電設備の導入費用や受電設備の増強をどう抑えるか
EV充電器の導入には、本体費用のほか、配線工事や設置工事などの費用がかかります。また、複数台の充電器を同時に使用する場合、既存の電力設備の容量によっては受電設備の増強が必要になる可能性もあります。
工場の電力使用量が比較的少ない時間帯に充電したり、複数台の充電出力を調整したりすることで、設備増強を抑えられる場合があります。導入費用を適切に管理するには、充電器の設置台数や出力だけでなく、既存の受電設備をどこまで活用できるかも含めた検討が必要です。
工場のEV充電では「充電制御」による電気代の抑制も選択肢に
製造業がEV充電器を導入する際には、設置時の費用だけでなく、導入後の電気代も考慮する必要があります。
特に、生産設備などで多くの電力を使用する工場では、複数台のEVを同時に充電することで最大需要電力が増加し、電気料金の上昇につながる可能性があります。
こうした課題への対応策の一つが「充電制御」です。EVの充電開始時間や充電出力を調整し、電力需要が集中する時間帯を避けて充電することで、契約電力の上昇や設備増強に伴うコストを抑えられる場合があります。
例えば、株式会社エネットのスマート充電サービス「EnneEV(エネーブ)」では、事業所の電力使用状況やEVの運用条件に応じた充電制御によって、電気料金の上昇を抑える仕組みを提供しています。
EV充電にかかる電気代は、導入台数や車両の走行距離などによっても異なります。EnneEVの料金シミュレーターでは、EVの導入台数と1台あたりの平均走行距離を入力することで、スマート充電による年間電気代の削減効果を試算できます。
社用車のEV化で、年間の電気代はどのくらい変わる?
EVの導入台数と1日の平均走行距離を入力するだけで、EnneEVによる年間電気代の削減効果を確認できます。
まとめ:製造業の社用車EV化は、車両運用と電力管理を一体で考える
政府は2030年までにEV充電インフラ30万口の整備を目指しており、全国で充電環境の拡充が進められています。製造業で社用車のEV化を進める際には、車両の稼働状況や必要な充電量に加え、工場や事業所の電力使用状況も考慮する必要があります。
特に複数台のEVを導入する場合には、充電器の台数を増やすだけでなく、充電時間の分散や充電制御なども含めて検討することが重要です。
車両の運用計画と事業所全体の電力管理を一体で考えることが、設備への過剰投資を避けながら安定したEV運用を実現するためのポイントとなります。
社用車のEV化とあわせて、工場そのもののCO2排出量を減らす取り組みも重要です。関連する内容については、以下の記事もご覧ください。
自動車業界のCO2削減|2030年に向けて自動車部品工場に求められる取り組み
※1 経済産業省「充電インフラ整備促進に向けた指針」(2023年10月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/charging_infrastructure/pdf/20231018_1.pdf
※2 経済産業省「蓄電池産業戦略推進会議 参考資料」(2026年6月2日)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/battery_strategy2/0008/shiryo04.pdf
