製造業の離職率は9.8%|他業種との比較で見る人材定着の現状と課題

製造業では、人手不足が続くなか、採用した人材に長く働いてもらうことが大きな課題となっています。
厚生労働省の「令和7年雇用動向調査」によると、2025年の製造業の離職率は9.8%で、全産業平均の13.7%を3.9ポイント下回りました。 ※1
一方、製造業の入職率は9.6%と離職率を下回っており、入ってくる人より辞める人の方が多い状況です。
本記事では、製造業で人材定着が重要になる背景を押さえたうえで、離職率を他業種や雇用形態別に比較し、企業が取り組める対策を紹介します。
製造業で人材の確保・定着が重要になる背景
製造業では、生産年齢人口の減少などを背景に、人材の確保が経営課題の一つとなっています。新たな人材を採用するだけでなく、今いる従業員に長く働いてもらうことも、安定した生産体制を維持するうえで欠かせません。
特に製造現場では、設備の操作や保全、品質管理など、経験を重ねることで身につく技能が多くあります。こうした業務を担う従業員が退職すると、後任者の採用だけでなく、教育や技能の引き継ぎにも時間がかかります。
また、欠員が続けば、ほかの従業員の業務負荷が増えたり、生産計画の見直しが必要になったりする場合もあります。
製造業にとって人材定着は、単に離職者を減らすだけでなく、技能を継承し、安定した生産体制を維持するための取り組みでもあります。
では、実際に製造業ではどのくらいの人が離職しているのでしょうか。次章では、厚生労働省の統計をもとに、製造業の離職率を見ていきます。
製造業の離職率は9.8%、全産業平均より3.9ポイント低い
厚生労働省の「令和7年雇用動向調査」によると、2025年の製造業の離職率は9.8%でした。全産業平均の13.7%と比べると、3.9ポイント低い水準です。※1
| 項目 | 製造業 | 全産業平均 |
|---|---|---|
| 離職率 | 9.8% | 13.7% |
| 入職率 | 9.6% | 14.7% |
| 入職超過率 | −0.2ポイント | +1.0ポイント |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」表4-2
製造業は全産業平均より離職率が低いものの、入職率も低くなっています。
2025年の製造業の入職者数は約73万2千人、離職者数は約75万1千人で、辞めた人が新たに入った人を約1万9千人上回りました。
つまり、製造業では離職を防ぐだけでなく、新たな人材を確保することも課題になっているといえます。
特に、生産設備の操作や保全、品質管理など、専門的な知識や経験が必要な仕事では、退職者が出てもすぐに後任を確保できるとは限りません。
人手不足が生産体制に影響しないようにするには、離職率だけでなく、採用状況や現場の欠員にも目を向けることが大切です。なお、本調査は常用労働者5人以上の事業所を対象としています。
製造業の離職率を他業種と比較
製造業の離職率は、宿泊業・飲食サービス業や卸売業・小売業などより低い一方、建設業や運輸業・郵便業などよりは高い水準です。2025年の主な産業の離職率は、次のとおりです。※1
| 産業 | 離職率 |
|---|---|
| 宿泊業、飲食サービス業 | 23.7% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 20.1% |
| 医療、福祉 | 14.3% |
| 全産業平均 | 13.7% |
| 卸売業、小売業 | 11.9% |
| 情報通信業 | 10.4% |
| 製造業 | 9.8% |
| 運輸業、郵便業 | 9.0% |
| 建設業 | 8.7% |
| 金融業、保険業 | 6.6% |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」表4-2。主な産業を抜粋。
今回比較した産業では、宿泊業・飲食サービス業が23.7%と最も高く、製造業との差は13.9ポイントでした。卸売業・小売業は11.9%、情報通信業は10.4%で、いずれも製造業を上回っています。
一方、建設業は8.7%、運輸業・郵便業は9.0%と、製造業より低い結果でした。
ただし、産業によって雇用形態や働き方、従業員の年齢構成などは異なります。離職率が低いからといって、必ずしも職場環境や待遇が優れているとは限りません。
他業種との比較は、自社の離職率がどの程度の水準にあるのかを知る目安として活用するのがよいでしょう。
製造業の離職率は雇用形態によっても異なる
製造業の離職率は、一般労働者とパートタイム労働者でも違いがあります。2025年の雇用動向調査では、一般労働者の離職率が9.2%、パートタイム労働者は14.2%でした。※1
| 就業形態 | 製造業の離職率 | 全産業平均 |
|---|---|---|
| 一般労働者 | 9.2% | 11.4% |
| パートタイム労働者 | 14.2% | 19.9% |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」表4-2
製造業では、パートタイム労働者の離職率が一般労働者より5.0ポイント高くなっています。ただし、全産業平均と比べると、どちらも低い水準です。さらに、入職率と離職率を比較すると、次のような違いがあります。
| 就業形態 | 入職率 | 離職率 | 入職超過率 |
|---|---|---|---|
| 一般労働者 | 8.8% | 9.2% | −0.4ポイント |
| パートタイム労働者 | 14.8% | 14.2% | +0.6ポイント |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」表4-2
一般労働者は離職率が入職率を上回っていますが、パートタイム労働者は入職率の方が高くなっています。
製造現場では、設備保全や生産技術などの専門職と、製造ラインの作業者では、必要な技能や育成にかかる時間が異なります。
例えば、特定の設備を扱える従業員が退職した場合、新しい人を採用できても、同じ仕事を任せられるようになるまでには時間がかかります。
そのため、全社の離職率だけでなく、どの職種で人が辞めているのか、現場にどのような影響が出ているのかを把握することが大切です。
製造業で人材定着を考える際の課題
製造業では、離職者の人数だけでなく、退職によって生産現場にどのような影響が出るかも考える必要があります。特に、技能の属人化や業務負荷の偏り、入社後の教育体制は、人材定着を考えるうえで確認しておきたいポイントです。
技能・ノウハウの属人化
製造現場には、設備の操作や加工条件の調整、設備保全、品質管理など、経験を重ねることで身につく技能があります。こうした仕事を特定の従業員に任せきりにしていると、その人が退職した際に、生産効率や品質に影響が出るおそれがあります。
例えば、設備トラブルへの対応を一部の熟練者に頼っている場合、後任者への引き継ぎが進んでいなければ、トラブルの復旧に時間がかかることもあるでしょう。
誰かが辞めると業務が止まってしまうような状態になっていないか、日頃から確認しておくことが大切です。
職場ごとの業務負荷の偏り
製造現場では、担当する工程や勤務形態によって、仕事の負担が異なります。例えば、交替勤務のある職場や、欠員が出ると残業・休日出勤が増える職場では、一部の従業員に負担が集中することがあります。
設備トラブルへの対応や急な生産計画の変更などが重なると、通常業務以外の負担も増えがちです。こうした職場では、残業時間や欠員状況、作業分担などを確認し、負担が偏っていないかを見直すことが考えられます。
ただし、業務負荷が離職の原因になっているとは限りません。実際の退職理由や従業員の声も確認しながら、改善すべき点を探ることが大切です。
入社後の教育・育成体制
製造現場では、安全教育や設備操作、品質管理など、担当業務に応じた教育が必要です。教育内容や習得基準が決まっていないと、教える人によって指導方法が異なり、従業員の習熟度にも差が生じやすくなります。
また、教育担当者が通常業務と新人教育を兼任している場合、十分な指導時間を確保できないこともあります。
新しく入った従業員が仕事に慣れるまで、どのくらいの時間がかかっているのか。教育担当者に負担が集中していないか。こうした点を確認することも、育成体制を見直すきっかけになります。
なお、今回の雇用動向調査だけでは、これらが製造業の主な離職原因であるとは判断できません。実際の課題は、各社の退職理由や職場の状況によって異なります。
製造業で人材定着を進めるための取り組み
人材定着に取り組む際は、まず「どの職場で、どのような人が辞めているのか」を把握することから始めましょう。そのうえで、技能継承や人員配置、教育体制など、自社で課題となっている部分を優先して改善していくことが大切です。
職場・職種別に離職状況を把握する
全社の離職率が低くても、特定の工場や製造ライン、職種に離職が集中している場合があります。そのため、離職状況を次のような項目に分けて確認すると、課題が見えやすくなります。
| 確認項目 | 把握したい内容 |
|---|---|
| 工場・部署・工程 | 離職が集中している職場はないか |
| 職種 | 生産技術、設備保全、製造ラインなどで違いがあるか |
| 勤続年数 | 入社後のどの時期に離職が多いか |
| 雇用形態 | 一般労働者とパートタイム労働者で違いがあるか |
| 退職理由 | 勤務条件や業務内容などに共通する傾向はないか |
例えば、入社して間もない従業員の離職が多ければ、教育体制や配属後のフォローを見直すきっかけになります。一方、特定の専門職で離職が続いている場合は、業務負荷や育成期間、後任者の確保状況などを確認するとよいでしょう。
離職率を全社で一括管理するだけでなく、職場や職種ごとに分けて見ることで、優先して対策すべき箇所が分かりやすくなります。
教育の標準化と技能継承を進める
特定の従業員しか担当できない仕事が多い場合は、作業手順や教育内容を整理し、ほかの従業員にも技能を引き継げる体制を整えましょう。
例えば、技能マップを使って従業員ごとの習得状況を見える化すれば、誰がどの工程を担当できるのか、どこで育成が必要なのかを把握しやすくなります。また、作業手順を標準化することで、教える人による指導内容のばらつきを減らすこともできます。
ただし、技能継承には時間がかかります。教育担当者に負担が集中しないよう、通常業務とのバランスを考えながら進めることが大切です。
業務負荷と人員配置を見直す
特定の職場で残業や欠員が続いている場合は、人員配置や作業分担を見直すことも有効です。例えば、工程ごとに作業負荷の差が大きい場合は、人員配置の調整や多能工化によって負担を分散できる可能性があります。
また、搬送や記録などの付帯作業に時間がかかっている場合は、作業方法の見直しや省人化・自動化も選択肢になります。
ただし、設備を導入したり、人員配置を変えたりするだけで離職が減るとは限りません。勤務条件や職場のコミュニケーション、教育体制なども含めて、従業員が働き続けやすい環境を整えていくことが大切です。
まとめ:製造業は離職率が低い一方、人材の確保と定着の両立が課題
厚生労働省の「令和7年雇用動向調査」によると、2025年の製造業の離職率は9.8%で、全産業平均の13.7%を3.9ポイント下回りました。
一方、製造業の入職率は9.6%で、離職率を0.2ポイント下回っています。また、一般労働者の離職率は9.2%、パートタイム労働者は14.2%と、雇用形態によっても違いがあります。
製造業では、離職率が低くても、専門的な技能を持つ従業員が退職すれば、生産体制に影響が出ることがあります。人材定着を進めるには、まず職場や職種ごとの離職状況を把握し、技能継承や教育体制、業務負荷など、自社の課題に合わせて対策を考えることが大切です。
新たな人材の採用と、今いる従業員が長く働ける環境づくりを両立させることが、安定した生産体制につながります。
※1 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年8月31日公表)
使用資料:「2.産業別の入職と離職」表4-1、表4-2
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/index.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/kekka_gaiyo-02.pdf
※離職率・入職率は、調査対象事業所における年初の常用労働者数を基準に算出されています。本調査は常用労働者5人以上の事業所を対象としたものです。
