食品業界のCO2削減はどう進める?2030年度目標と食品工場で取り組む5つの方法

食品業界では、2030年度に向けてCO2排出量やエネルギー使用量の削減が進められています。2024年度実績では、乳業やパン製造など一部業種が2030年度目標をすでに上回る一方、さらなる削減が必要な業種もあります。食品業界でCO2削減を進めるには、まず排出源を把握し、冷凍・冷蔵、加熱・乾燥・殺菌、空調・コンプレッサなどエネルギー使用量の大きい工程から省エネを進め、再生可能エネルギーや食品ロス削減などへ対象を広げていくことが重要です。
食品業界ではなぜCO2削減が求められているのか
食品産業では、製造工程で使用する電力・燃料に加え、原材料の調達、輸送、冷蔵・冷凍、廃棄など幅広い場面で温室効果ガスが発生します。特に食品工場では、品質や衛生を保つために冷却・冷凍、加熱、乾燥、殺菌などを継続的に行う必要があり、エネルギー使用量の削減がCO2削減の重要なテーマになります。
農林水産省は、食品産業を中心とする各業界が設定した温室効果ガス削減目標について毎年度進捗を確認しており、2024年度の点検対象は20業種です。各業界ではCO2排出量、CO2排出原単位、エネルギー消費原単位などの2030年度目標を設定し、省エネ設備の導入やエネルギー効率向上などを進めています。※1
食品業界のCO2削減はどこまで進んでいる?
2024年度実績を見ると、削減の進捗には業種によって差があります。乳業やパン製造では2030年度目標をすでに上回る一方、即席食品やスターチ・糖化工業では、目標達成に向けて追加の削減が必要です。※1
| 業種・団体 | 2030年度目標 | 2024年度実績 | 状況 |
| 乳業(日本乳業協会) | 2013年度比 38%減 | 41%減 | 目標を上回る |
| パン製造(日本パン工業会) | 2013年度比 13%減 | 42%減 | 目標を上回る |
| 即席食品(日本即席食品工業協会) | 2013年度比 30%減 | 23%減 | 追加削減が必要 |
| スターチ・糖化工業 | 2013年度比 30.3%減 | 19%減 | 追加削減が必要 |
このほか、全日本コーヒー協会では2005年度比59%減、日本醤油協会では2013年度比43%減となっています。食品業界全体として削減は進んでいますが、2030年度目標に対する現在地は業種ごとに異なるため、自社の排出量とエネルギー使用状況を把握したうえで対策を選ぶ必要があります。※1
CO2削減は、食品業界以外でも進められています。関連する内容については、以下の記事もご覧ください。
自動車業界のCO2削減|2030年に向けて自動車部品工場に求められる取り組み
食品業界・食品工場でCO2を削減する5つの方法
1. CO2排出量とエネルギー使用量を「見える化」する
最初に行いたいのは、工場や工程ごとの電力・燃料使用量を把握し、どこでCO2が多く発生しているかを明確にすることです。全体の使用量だけでなく、冷凍・冷蔵、加熱・乾燥・殺菌、空調、コンプレッサなど設備・工程単位で把握すると、削減余地の大きい箇所から優先順位を付けやすくなります。
2. 冷凍・冷蔵設備の運用と効率を見直す
食品工場では、品質維持のため冷凍・冷蔵設備を長時間稼働させるケースがあります。設定温度の適正化、扉の開放時間の短縮、設備の保守、高効率機器への更新など、運用改善と設備改善の両面からエネルギー使用量を抑えることが重要です。
3. 加熱・乾燥・殺菌など「熱を使う工程」を省エネ化する
食品製造では、加熱、乾燥、焼成、殺菌など多くの工程で熱エネルギーを使用します。必要以上に広い範囲を加熱していないか、立ち上げや待機時に余分なエネルギーを使っていないかを確認し、断熱・排熱回収・高効率設備への更新などを検討します。必要な場所を必要な時間だけ加熱する考え方も有効です。
4. 空調・コンプレッサ・ボイラーなどユーティリティ設備を改善する
製造設備だけでなく、空調、圧縮空気、蒸気、温水など工場全体を支えるユーティリティ設備にも削減余地があります。不要時停止、圧力・温度設定の適正化、配管の漏れ対策、保温、高効率設備への更新など、小さな改善を積み重ねることがCO2削減につながります。
5. 再生可能エネルギー・食品ロス・サプライチェーンまで対象を広げる
省エネによって使用エネルギーそのものを減らしたうえで、再生可能エネルギー由来電力の調達や自家消費型太陽光発電などを検討すると、さらにCO2削減を進められます。また食品業界では、食品ロスの削減、物流の効率化、原材料調達などサプライチェーン全体の排出量にも視野を広げることが重要です。
食品工場では「熱源設備」の見直しもCO2削減のポイント
食品工場では、加熱・乾燥・殺菌など熱を使用する工程が多いため、熱源設備の効率化はCO2削減を考えるうえで重要です。既存設備で必要以上のエネルギーを使用していないか、加熱が必要な箇所以外にも熱を供給していないかなどを工程ごとに確認すると、改善余地を見つけやすくなります。
例えば、エクセリタスノーブルライトジャパン株式会社の赤外線ヒーターは、必要な時だけ稼働し、必要な箇所のみをゾーン制御で急速加熱することが可能です。加熱対象や工程条件によって適否は異なりますが、2030年度のCO2削減目標に向けた設備改善策の一つとして、既存の熱源設備と比較・検討できます。
食品業界のCO2削減は「現状把握→省エネ→エネルギー転換」の順で進める
食品業界では、乳業やパン製造など2030年度目標をすでに上回る業種がある一方、追加削減が必要な業種もあります。自社でCO2削減を進める際は、まず排出量とエネルギー使用量を把握し、冷凍・冷蔵や熱工程、ユーティリティ設備など削減余地の大きい箇所から省エネを進めることが基本です。そのうえで、再生可能エネルギーへの切り替えや食品ロス、物流・調達を含むサプライチェーンへ対象を広げることで、継続的な削減につなげやすくなります。
よくある質問
Q. 食品業界では、どの工程からCO2削減に取り組むべきですか?
A. まず電力・燃料使用量を設備・工程単位で把握し、使用量の大きい工程から優先します。食品工場では、冷凍・冷蔵、加熱・乾燥・殺菌、空調、コンプレッサ、ボイラーなどが主な確認対象になります。
Q. 食品工場のCO2削減では設備更新が必須ですか?
A. 必ずしも設備更新から始める必要はありません。設定温度・圧力の適正化、不要時停止、配管の漏れや断熱の改善など、運用改善で削減できる場合があります。運用改善後に、高効率設備への更新を検討すると優先順位を付けやすくなります。
Q. 再生可能エネルギーに切り替えればCO2削減は十分ですか?
A. 再生可能エネルギーの活用は有効ですが、まず省エネで必要なエネルギー量を減らし、そのうえで再エネへ切り替える考え方が重要です。食品業界では食品ロスや物流、原材料調達なども含めて削減対象を広げることが求められます。
※1 農林水産省「地球温暖化対策計画における2024年度の農林水産分野の地球温暖化対策・施策の点検結果(概要)」― 食品産業等20業種の2030年度目標・2024年度実績
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/goudou/attach/pdf/260528-4.pdf
※2 農林水産省「地球温暖化対策計画の概要」― 食品産業等における温室効果ガス排出削減対策、省エネルギー・地球温暖化対策の優良事例の横展開
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/taisaku/attach/pdf/top-32.pdf
参考:環境省「工場・事業場の脱炭素化推進支援サイト/CO2削減対策Navi」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kojojigyojo.html
本コラムの作成・編集者
ターゲットメディア株式会社 ENTERA編集部
BtoBマーケティング支援を手がけるターゲットメディア株式会社の編集チーム。官公庁が公表する統計・白書をもとに、人事・経済・DXなど企業活動に関わるテーマを数字で読み解き、エンタープライズ企業の実務担当者に向けて発信しています。
